今宵は天使と輪舞曲を。
§ 06***わからず屋。
なんて綺麗なんだろう。
彼女のグレー色の目は今、湖に囲まれているおかげでターコイズブルー色へと変化していた。白い陽光に包まれた彼女のプラチナブロンドはそよ風に吹かれ、薔薇色に染まった頬を撫でる。
どこまでも淀みなく澄み切った瞳はどの景色にも同調し、ラファエルを魅了する。
頬にかかった髪を耳の横にかけてやれば、長い口づけを交わしていたためにぽってりと赤く腫れた唇がラファエルを誘惑する。
メレディスの重みがラファエルの体に熱を灯す。彼は華奢な腰を引き寄せた。
彼女の体は折れそうなほど華奢なのに、柔らかい。ぼくの体とぴったり重なる。
「君はとても綺麗だ」
彼女の魅力に抗う力を無くしているラファエルは腫れた唇を塞ごうとした時だった。
「よかった。やっぱりここだったのね」
背後から声が聞こえた。声の主は知っている。妹のキャロラインだ。ありがたいことに、やって来たのは彼女ひとりだけではない。父、モーリス・ブラフマンもいた。
ラファエルは上体を起こし、メレディスからほんの少し距離をとる。しかし彼女は腰の力が抜けているらしい。足に力が入らないようだ。身近にいるラファエルだけに聞き取れる甘くうめいた。
「わ、わたし……」
戸惑っている彼女の言葉はうまく呂律が回っていない。口づけただけでこの状況をもたらせるというのは男として誇らしいものだ。どこまでも初心な彼女が可愛らしく、そして愛らしい。
けれどもこの状況はラファエルにとって地獄でもある。