今宵は天使と輪舞曲を。

「それで、なぜ見え透いた策を練ったのか教えてほしいな」

 自分よりも頭ひとつ分ほど背の低い妹を見下ろし、そう言ったのは他でもない。釣りに出ろと行ったのは彼女だったからだ。ラファエルは暗にそう告げた。

「見え透いた策なんて言い方はひどいわ!」

 彼女ははじめ、アンバー色の目を左右に動かし、動揺していた様子だったが、どうやら妹は自分は悪くないという考えに治まったらしい。鼻孔を膨らませると腰に手を当て、居直ってみせた。

「わたしはただ、ラファエルは最近ずっと働き詰めだったから、釣りに行って休んもらいたかっただけよ!」

「それも君に言われたのは昨日だ。昨日の今日、たまたま(・・・・)彼女がやって来て、たまたま(・・・・)ふたりきりになったんだ」

 ラファエルはたまたま(・・・・)のアクセントのところを強く強調した。
「そしてキャロライン。お前が彼女に落ち合おうと告げた小屋はこの周辺にはない」
 ラファエルは止めの言葉を妹に告げた。

「だってラファエル、あなたメレディスと距離を置こうとしているじゃない」

 キャロラインは自分は悪くないことを示すため、頬を膨らませて抗議する。ラファエルを見据える彼女の目は自分が正義であることを疑っていない。ラファエルを咎めた。

「それは彼女がぼくを拒んだからだ」

 それは三度目の社交パーティーの晩、メレディス・トスカは急に声を荒げたかと思えばラファエルに癇癪を起こした時のことだ。


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