今宵は天使と輪舞曲を。

§ 07***本当にそう思う?




 ラファエルと別れ、モーリスと屋敷に戻る際。メレディスは気が気ではなかった。屋敷に戻る途中で伯爵に何度か訊ねられたが受け答えはふたつ返事で、何を訊ねられたのかさえ、はっきりとした記憶がない。

 とにかくラファエルとの甘いひとときはメレディスにとって予想だにしなかった出来事ことだった。
 それに彼の父親には後ろめたい気持ちでいっぱいだった。頭が真っ白で自分の身に何が起きていたのかさえも考えられなかったのだ。おかげでメレディスの胸はいっぱいで食事どころではない。
 況してや親戚と席を並べられるはずもなかった。だって彼とは金輪際、二度と口を利かないと約束した。それなのにどうだろう。自分は口を利く以上のことを見事にやってのけたのだ。それだけではない。目の前には彼の両親やキャロラインもいる。こんな熱を持つ体のまま、何もなかったかのように食事なんてできやしない。
 彼女はブラフマン家での夕食を断わり自分にあてがわれた部屋に隠る。
 そうしてようやくひとりきりになれたことに感謝さえした。

 大きなベッドに腰を下ろせば、体はずしりと重みを増した。肺に溜まった異物が大きく蜷局を巻いている。胸が苦しい。
 とにかく、メレディスの頭は勝手にラファエルとの甘いひとときを蘇らせてくるのだ。体に両腕を回せば、熱を帯びているのが分かる。思わずうめいてしまいそうになる唇を閉ざせば、見計らったかのように控え目なノック音が聞こえた。


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