今宵は天使と輪舞曲を。
どんなに頑張って背伸びをしたとしても、所詮は没落貴族。もともとラファエルやキャロラインのように華やかで品のある人々とは縁がないのだ。
――胸が痛い。
ラファエルやキャロラインと過ごせば過ごした分だけ自分の身の程を思い知らされる。メレディスはずきずきと痛む胸に手を置くと、震える息をそっと吐いた。
今日という一日を考えただけでも苦痛だ。
時期に昼食の時間になる。この屋敷には叔母のエミリアやジョーン、それにヘルミナがいる。彼女たちと顔を合わせたくはない。キャロラインが出掛けるのなら、自分もこの屋敷から出たいとメレディスは思った。
「ベス、わたし。昼食をする気になれないわ」
今日になって二度目の着替えになる。今までこんなに頻繁に着替えをしたことがない。雑務をこなしているのならまだしも、今朝からじっとしているメレディスにとってはこの行為も無駄のように思えた。メレディスは力なく声を吐き出し、そんな彼女の身支度を手伝うベスに告げた。
ベスが着せてくれたドレスは裾が広がったもので、果てしなく広がる深い青は海を連想させる。当然、メレディスにはこんな美しいドレスなんて持っていない。キャロラインが選んでくれたものだと、何の取り柄もない自分の世話を焼く働き者の彼女に告げられた。
本当は、こんな美しいドレスに袖を通すなんてできるはずがない。どう考えても自分には不似合いだ。けれどもドレスを選んでくれたキャロラインの気持ちを考えると受け取れないと口にすることができなかった。