今宵は天使と輪舞曲を。
「メレディス、わかっているでしょうけれど、会場ではあなたは壁にいるのよ。主役はあくまでジョーンとヘルミナなのですからね!」
「はい、叔母さま」
メレディスは歯を食いしばって答えた。
エミリアはいくら目障りだからといってメレディスを除け者にするわけにはいかなかった。
それというのも、貴族たちはゴシップを好んでいたからだ。
暇を持て余す彼らは常に他人の不幸を喜び、蔑んで陰口をたたく。貴族界では、ほんの少しのゴシップでさえも身を滅ぼしかねないのだ。
もし、エミリアがメレディスを爪弾きにしてしまえば、デボネ家は血も涙もない悪女だと噂される恐れがある。
外面がいいエミリアは常に風評を気にしていた。だから彼女はメレディスを逆に利用することにしたのだ。
要は身寄りのないメレディスを引き取った心優しい婦人を演じればいいだけのこと。
屋敷の中では彼女を爪弾きにし、社交界の時にはそれらしい服装で着飾って貴族たちの前に披露させておけば、たったそれだけでエミリアの評判は上がる。
もちろん、会場の華になるのはメレディスではない。エミリアの実の娘たちだ。なにせ彼女は絶えず溢れ出る黄金の泉を探し求めている。
彼女は昔から散財をするのが趣味だった。
そして屋敷を切り盛りする方法も、領地や領民にも感心を示さなかった。
彼女の姿勢は夫を亡くしてからも変わらない。