今宵は天使と輪舞曲を。
そして彼らは自分たちがどれほど優れた人間であるかも知っているようだ。それらは父モーリスと妻エミリアとの会話からも理解できた。
果たしてそんな男性が誰かを利用して自分の生き様を変えようと思うだろうか。
他人の評価を真に受け、ましてや自分たちよりも弱い立場にあるメレディスをよりしろにしようと思うだろうか。
ブラフマン家は他力本願を嫌っている。ならばラファエルはいったい何のために自分を口説こうとしているのだろう。
彼にとって、メレディスを傍に置いたところで何の利点もない。それどころか、メレディスには上流階級に必要不可欠な社交性なんていうものは皆無だ。ブラフマン家の面汚しにしかならない。
頭の良い彼だ。きっとメレディスが上手く立ち振る舞えないことくらいお見通しだろうに――。
ならばやはり、彼は躍起になって結婚相手を探している母親を止めようとしていると考えるのが妥当だ。メレディスという貧しい女性ほど打って付けの相手はいない。
胸の痛みで呼吸が震える。利用するためだけに口づけたのかと思うと悲しい。
すべてから自分を消したくなったメレディスは深く目を閉じた。
今度、ラファエルと会ったとしても、やはり何も動じないようにするべきだ。彼に何を尋ねられても澄ました顔をしよう。ただの置物だと考えればいい。
でも、ハンサムな彼といると胸が弾む。体はメレディスのものなのに、まるで自分のものではないみたいだ。