今宵は天使と輪舞曲を。
今やメレディスの胸の鼓動は大きく高鳴っている。思い出すのは昨日交わした彼との口づけだ。薄い唇はメレディスの口を簡単に塞ぎ、甘い熱を注ぎ込んだ。彼の口づけは力強く、抱きしめてくれる腕の力にも似ている。弾力があって、甘いのにどこかスパイシーで……。
みぞおちに熱が宿る。メレディスは当初を思い出し、下唇を噛んだ。
「それは君の悪い癖だね。魅力的な唇が裂けてしまう」
必然的にメレディスの視線が落ちてしまえば、彼の指先が顎を持ち上げた。
時折、どこからか吹くそよ風に揺られて草木がさやさやと音を奏でる。不思議な感覚だった。まるでこの静かな空間が世界のすべてでただのふたりきりしか存在していないと思えてしまう。果たして彼もそう思っているのだろうか。
ぶつかり合う視線にふたりは何を言うでもなくただ視線を交わし、互いの目を見つめ合った。
骨張った長い指はメレディスの唇の輪郭をたしかめるようになぞった後、離れる。
ラファエルの指先が離れてしまえば、とたんに寂しく思えた。
わたしはいったいどうしてしまったのかしら。
困惑するメレディスを知ってか知らずか、彼は上着の上に座るよう促し、バスケットからサンドイッチをひとつ差し出した。
「ところで前に話してくれた君の馬のことなんだが――クリーム色でつぶらな目の他に特徴はあったのかな?」
サンドイッチを頬張る中、先ほどよりもずっと明るい口調で彼は会話を切り出した。
まさか昨日の話を覚えているなんて!