今宵は天使と輪舞曲を。
やがて支出が収入を上回り、メレディスの両親が必死に守っていた土地も屋敷もすべて売り払うとメレディスの持ち物にまで魔の手が広がりはじめていた。
彼女は自分の行いを省みないどころか没落貴族から抜け出そうと玉の輿を夢見ているのだ。そのためにはジョーンとヘルミナは立派な紳士を手に入れなければならない。
そう、たとえばブラフマン伯爵家のような立派な紳士を――。
それにしてもエミリアはいったいどうやってメレディスが紳士の目に止まると思っているのだろうか。
「壁にいなさい」なんて言われなくても分かっている。
メレディスが日々することといえば、埃を相手に使用人の真似事ばかり。おかげで指先の皮膚は数カ所にわたって裂け、血で滲んでいる。
ろくにダンスも踊れない。
唯一ここへ来て上達したことといえば、雑巾の絞り方や箒の操り方くらいだ。メレディスは淑女としての嗜みや必要なことなどひとつも知らない――知る機会さえ与えられずにいる。
それに容姿だって――。
紳士に求められる唇は荒れているし、肌だって栄養が不十分なおかげで痩せこけている。
どこからどう見ても自分は卑しい存在だ。
メレディスは三人の視線が自分から離れたのを見計らい、彼女たちに気づかれないようひっそりと落胆のため息をついた。
デボネ家に厄介になってからというもの、自分はこんなにも醜い姿になった。