今宵は天使と輪舞曲を。
「君を咎めることは誰にもできない」
あんなふうに彼を責めるのは間違っていた。メレディスが小さく首を振れば、彼の手が伸びてきた。膝の上に置いていた手は、彼の大きな手によってそっと包み込まれた。
メレディスは息をのんだ。
それというのも傷だらけの手が人目に晒すのを避けるために今はグローブをしているが、彼は昨日、メレディスの手がどれほど穢らわしい態をしているのかは知っている。
こんな汚らしい手に触れたがる紳士なんてまずいない。そう思っていただけに、メレディスは驚いていた。手を膝から引っ込めようにも彼の手は今もなおメレディスの手を包み込んで離さない。
メレディスは生まれてこの方、紳士から好意を受けた経験がなかった。あるとすれば、ルイス・ピッチャーのような権力を振りかざす独裁者。それこそ不幸な身の上で育ったメレディスのような女性を利用しようと考える自分勝手な人間ばかりだった。そういうことだからメレディスにはラファエルのような紳士とどう向き合っていいのかさえも分からない。必然的に俯いてしまうのだが、しかしそれさえもラファエルは許さなかった。
「メレディス、君は美しい」
彼がメレディスを褒め称えたかと思えば、もう片方の骨張った手が彼女の頬を撫でる。
はっとして顔を上げると、真剣な眼差しとぶつかった。透き通った淡い緑の目はやがて濃い深緑色へと変わっていく。ラファエルが何を求めているのかは彼女の本能で理解した。