今宵は天使と輪舞曲を。
ラファエルは本気でわたしのことを美しいと思っているの?
それともこれはただの遊び?
ふと頭の中にそんな疑問が過ぎる。けれども今は考える余裕がない。
みぞおちに熱が溜まり、その熱は彼を求めて渦巻いている。いけないと思っても体が勝手に反応してしまうのだ。メレディスはたくましい背に自ら腕を回した。それを合図に薄い唇はメレディスを塞ぎ、強く吸い上げる。
二本の力強い腕が後ろに伸びて自分を包み込む。こうして彼に包み込まれていると、誰よりも強くなれる気がする。まるで雄々しい獅子に守られているような感じがする……。メレディスはこの感覚が好きだった。
メレディスも負けじと腕を伸ばし、さらに彼を求める。甘い声を唇から解き放てば、その隙に乗じて熱を帯びたざらついた舌が滑り込んでくる。メレディスが彼の舌を招き入れると、ふたりの口づけはいっそう深くなる。
「ブローチは?」
深く重ねられた唇が解かれ、ラファエルに尋ねられた。メレディスは頭がぼうっとしていたから何を訊かれていたのか理解できない。
頭の中は真っ白だ。
そんなメレディスを余所に、ラファエルの唇は首筋を捉え、肌を吸う。あまりにも誘惑的な唇の動きに不抜けた声で返事をすると――。
「レディー・デボネに奪われたブローチはどんな形を?」
「金色のブローチで、真中にはエメラルドが嵌め込まれていたわ。三日月と露に濡れた雫の形が綺麗なの……」
果たして自分はきちんと答えられているだろうか。
口づけに酔い痴れているメレディスは心ここにあらずといった様子で話した。
「メレディス」
低音で彼がメレディスの名を呼ぶたびに、メレディスの全身に電流が駆け巡った。
「ああ、ラファエル。わたし……」
全身から力が抜けていく。いつの間にかラファエルの上着の上でぐったりと横たわり、透けるような青空を背にしているラファエルと視線が交わる。
彼の口づけにメレディスは浅い呼吸で応えた。すると二度、三度と頬や瞼に啄むような口づけが落とされる。
メレディスは、くすぐったいやら恥ずかしいやらで彼に身を寄せ、腕の中に顔を埋めた。