今宵は天使と輪舞曲を。

§ 11***隠しごと。




「最近、昼食に席を外すことが増えておりますが、貴女いったいどこで食事をしているの? ブラフマン伯やご夫人にご迷惑だと思わなくて?」

 例によってブラフマン夫妻と彼らの愛娘キャロライン、伯母のエミリアと彼女の二人娘ジョーンとヘルミナの七人が集まり、昼食も終わりを告げる頃、エミリアはグラスのワインを一口飲んでからメレディスへの苦情を口にした。
 赤い紅を纏う唇が意地悪そうにひん曲がっている。

「昨夜だって一昨日だってディナーのお誘いを断っているわ」
 すると、姉のジョーンも姪いびりを開始するため、母親の言葉に続いた。彼女もまた愉快げに眉尻をひくつかせて妹のヘルミナの隣に座っているメレディスを見た。

 二人とも遠回しな言い方だが、実際はブラフマン家のことなど考えていない。彼女たちはただ単にメレディスが楽しそうにしている姿が気にくわないのだ。そしてお目当てだったブラフマン家の兄弟に会うことさえ叶わず、ジレンマを抱えているようだ。――とはいえ、夫が亡くなってからというものデボネ家ではできなくなった贅沢な生活を味わえているのも事実で、そういうこともあってかほんの少し気分もいいのだろうことは窺える。昨日だって彼女たちはブラフマン家の従者を連れて馬車を出してもらい、街中へと出かけては仕立屋で綺麗なドレスを我が物顔で新調したりと、豪遊しているとキャロラインから聞いている。


< 187 / 358 >

この作品をシェア

pagetop