今宵は天使と輪舞曲を。
レニアは愛娘を非難されることが気にくわなかったようだ。ラファエルと同じエメラルドの目は強く光っている。挑むような視線をエミリアに投げかけ、ナプキンで口を拭きながら静かに答えた。
「わたしや妻、息子たちはどうもキャロラインには甘くてね」
ブラフマン伯爵は愛想良く笑い、その場を和ませるに務める。
メレディスが隣を見ると、キャロラインの口角が上がっている。彼女はこの状況を明らかに楽しんでいるようだ。
メレディスは気が気ではなかったが、それ以上突っ込まれなかったことにほっとした。
食事を終えた一行はそれぞれの部屋に戻る。メレディスが割り当てられた自分の部屋のドアノブを回した時だった。今日だって殆ど自分から話しをしなかったヘルミナが突然声を掛けてきた。
「メレディス、最近気分が良さそうだけれど、日中何をしているの? 二日前は伯爵と乗馬だったけれど、昨日は貴女を見かけなかったわ。何をしていたの?」
てっきりヘルミナもエミリアやジョーンと一緒に街へ出かけていたのかと思っていたが、彼女はどうやら別行動をしていたようだ。
「貴女は何をしていたの?」
メレディスはどう答えるべきかを考え倦ねていた。時間稼ぎに訊ねてみた。
――湖でラファエルと過ごしていたことは言いたくない。言ってしまえば最後、ラファエルとの仲を嗅ぎつけられ、邪魔をされるに決まっているのだ。
自分だって少しくらいハンサムな紳士との会話を楽しみたい。そう思うのは我が儘だろうか。