今宵は天使と輪舞曲を。
「雄馬なの?」
彼女の顔がこちらを向き、首を傾げた。陽の光が彼女の肌をなぞる。
そこでラファエルは今日の彼女の目の色はエメラルド色になっていることに気がついた。彼女の澄んだ目に見つめられればすべてを自分で満たしたくなる。
ラファエルは彼女の体を引き寄せたくなるのを我慢して、代わりに彼女に見つからないよう、手の中にある手綱を強く握り締めた。
「ああ、彼はぼくの厩舎にいるどの馬よりも温厚で優しいんだ」
メレディスは、「そう」とひとつ相槌を打った後、また少しカインとの距離を縮めた。
「こんにちは。今日はあなたがエスコートをしてくれるのかしら?」
メレディスは静かに、ゆっくり話しかけた。
――彼女は今でも馬の扱いに慣れている。
少し手を伸ばし、彼の様子を窺っていると、馬の方から鼻の頭を近づけた。ラファエルは万が一のことを考えて温厚な馬を選んだのだが、彼女なら他の馬も手名づけられそうだと思った。
馬はメレディスに撫でられるのを任せ、自らも頭を擦り寄せ、彼女に甘えている。
正直どんな馬も初対面ではこんなにもすぐ懐く姿は殆ど無い。彼女は根っからの馬好きなのだと理解した。
「ミス・トスカ、どうぞ」
ひとしきり撫で終えた彼女を誘導し、カインの背に乗せると、ラファエルも同じように乗った。瞬間、メレディスが息を飲むのがわかった。
彼女は間違いなくラファエルをひとりの男として意識してしている。そう思えば嬉しくなる。