今宵は天使と輪舞曲を。

 そしてもっと彼女に接近したいという気持ちも出てくる。

 片腕でわざと華奢な腰を掴み、自らの方向へ彼女を引き寄せる。

「メレディス……」
 耳元でそっと彼女の名を告げれば、メレディスは赤い唇に小さなため息を漏らした。
 彼女の反応がラファエルの悪戯心を刺激する。小振りだが丸みを帯びた豊かな胸にさりげなく手の甲で触れた。とにかく彼女に触れたくてたまらないのだ。
 すると彼女は緊張しているのか、布越しからでもつんと尖った頂が感じられた。ほんの少し体が震えた後に、悩ましげな甘い吐息が唇から漏れた。その吐息ごと、唇を今すぐ塞いでしまいたい。そんなおかしな衝動に駆られてしまう。メレディスはラファエルを魅了するのが上手い。こちら側が仕掛けているにも関わらず、逆に仕掛けられているような気がして仕方がないのだ。

 彼女の肉体も、何もかもが美しい。
 ラファエルは観念して踵でカインに進行する合図を送った。カインが動くと、彼女はラファエルに身を預けた。

 脳裏に過ぎるのは、昨日、一昨日と連日に渡って彼女と口づけた感覚だ。自分の膝の上に乗る華奢な体はどこもかしこも柔らかだった。腰を揺らし、口づけだけでも感じている蕩けた表情はなんとも言えないほど美しかった。

 おかげでまたもやおかしな考えが過ぎるから仕方がない。目の前には自分が求めている女性がいるというのに手を出せない苦痛。そういうことで厩舎に向かう道すがらは、拷問にも近いものになってしまった。おかしな真似はするなと自分に言い聞かせなくてはならないのだ。


< 196 / 358 >

この作品をシェア

pagetop