今宵は天使と輪舞曲を。
「メレディス様は馬にも好かれているなんてますます坊ちゃまにお似合いですね」
ラフマはラファエルにそっと耳打ちした。しかし、メレディスとラファエルの距離は近い。おかげでラフマがラファエルに何を告げたのかは彼女の耳にもしっかり届いている。メレディスは頬を薔薇色に染めて項垂れた。耳が赤く染まっている。――そうだ。彼女には他の女性にはない、そういう初心なところがある。そういうところもまた、ラファエルがメレディスを気に入っているひとつでもあった。
メレディスはラファエルの厩舎に入ると、たちまち馬たちの人気者になった。
ある馬は自ら頭を彼女の背中に寄せ、また違う馬は鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。
その度に可愛らしい笑い声が弾き出された。
メレディスの笑い声はラファエルの心を浮上させるのにもっとも有効的だ。
彼女の笑い声をもっと聞きたい。メレディスと一緒にいればその分、彼女と離れがたくなっていくのがわかった。
そこでラファエルは、自分が手塩に育てている数ある馬の中から彼女が一番気に入った馬を選んで走らせに行こうと提案した。
彼女はグレーの目を見開き、赤い唇の口角が上がる。その表情はどんなダイヤモンドにも及ばない輝きがあった。そうなると、またもや彼女の唇を塞ぎたくなる衝動がラファエルの中に駆け巡る。それでもどうにか抑え込むことに成功すると。直ぐさま厩舎から二頭の馬を運び出した。
「この先に馬を走らせるのに丁度いい場所があるんだ」
ひとしきり馬を愛でた後、彼女が選んだ馬は湖からラファエルの屋敷があるこの場所まで運んでくれたカインだった。