今宵は天使と輪舞曲を。
毛色や性別こそ違うが、穏やかでどこか品のある性格は彼女が昔飼っていた愛馬にとてもよく似ているらしい。
そんなラファエルが選んだ馬は、乳白色をした雄馬で、彼は人懐っこく甘えん坊だが好奇心旺盛な悪戯好きの性格をしている。カインよりも行動的な馬だった。
二人と二頭はラファエルの屋敷から数キロ離れた丘を目指した。
蹄が土を蹴り、闊歩する。ラファエルの前を走る彼女は姿勢を正し、カインのリズムに合わせた。一心同体ともいえるその姿は今日初めて乗ったとは思えないほどの手綱さばきをしていた。彼女が右を目指せばカインも合わせて右へ、左へ照準を合わせれば左へ向かう。メレディスは本当に馬が好きなのだ。
目的地を目指して15分ほど馬を走らせていると、少しずつなだらかな坂道へと変化する。緑に覆われた木々は少しずつ減り、視界が開けるとすぐ目の前は丘だ。
「まあ、ラファエル素敵!!」
彼女は目の前に広がる光景を目に写すなり、長い睫毛を瞬いてうっとりと目を細めた。
そこには美しい紫色をしたラベンダーが咲いている。心優しいメレディスはきっとこの丘に咲く花々も気に入ってくれるだろう。そう思って彼女を案内したのだが、その考えは間違いではなかったとラファエルは思った。
彼女はため息をついて微笑を浮かべている。
一面に広がる花々を見せただけで彼女はこうも幸福そうに笑う。これから先、もっと彼女に色々なものを見せてやりたい。そして彼女を笑顔に導くのは他ならないラファエルなのだ。