今宵は天使と輪舞曲を。

 どこからかやって来るそよ風が一面に咲き誇るラベンダーを揺らす。メレディスといるとどんな景色も神秘的に思えてくるのは不思議だ。

 二人は目の前に広がる光景を楽しんでいた。するとどこからだろう、少女の泣く声が聞こえてきた。
 視線を送れば、大木の下で蹲る少女の姿があった。年の頃なら一〇歳くらいだろうか、おそらくこの少女はこの丘を下ったところにある民家の子供だろう。膝元にはいったいどこで集めてきたのか、色とりどりの花々があった。

「どうしたの?」
 メレディスは少女を見るなりそっと馬から下りると足元に散っている花々を拾い上げるなり、そっと尋ねた。

「病気で寝ているお姉ちゃんのために花冠を作ろうと思ったの。でも上手くできなくて……」
 しゃくりを上げながら、少女は静かに説明をはじめた。

「まあ、そうなの。わたし、花冠を作るのが得意なの。一緒に作りましょうか」

 メレディスの言葉に、少女は泣くのを止めると大きく頷いてみせた。

 一輪、また一輪と彼女の手の中で束になり、輪っかへと仕上がっていく。

 やがて膝元で散っている花々は見事な花冠になっていく。少女もまた、いつの間にか笑い声を上げてメレディスが組み上げた輪っかに花を差し込んでいく。

「できた!!」
 一際元気で明るい少女の声が緑に響き渡る。
「王冠よりも神々しい出来だ」
 美しい花冠が仕上がっていく様を見ていたラファエルが賞賛すると、少女は顔中に満面の笑みを浮かべた。

「お姉ちゃん、ありがとう」
 少女はメレディスの頬にキスをすると、意気揚々と丘を駆け下りていく。

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