今宵は天使と輪舞曲を。
彼女は走り去っていく少女の背中に手を振って、微笑を浮かべていた。
もし、彼女が結婚すれば、娘が産まれるとこんなやり取りをするのだろうか。花冠の作り方を教え、娘もまた楽しそうに作る。笑いの絶えないあたたかな家庭。それこそがラファエルが妻に求めるものだ。
やはり彼女は自分が望んでいる家庭を築いてくれる。そう確信した出来事だった。
「子供が好きなのか?」
「子供はいつだって元気を与えてくれるわ。彼女、あるいは彼らはわたしがどんな身分かなんて考えもしないもの」
メレディスは両肩を窄めた。彼女の皮肉めいた言葉にラファエルは苛立った。
ラファエルは彼女の身分など考えもしていないのにメレディスは常に自分を卑下する。
「メレディス、身分なんてそんなものは人間が定めたものにすぎない。君はとても美しい」
「貴方はそう言ってくれるけれど、実際は身分ほど大切なものは他にはないのよ。専ら伯爵という立派な立場に置かれている貴方たちは――」
言った途端だった。
ラファエルは彼女の唇を塞いだ。緑の丘に彼女を押し倒し、そのまま深く彼女を味わう。まさに今日、これこそが自分が望んでいたことなのだと、ラファエルは理解した。
《彼女と馬と花飾りの少女と。・完》