今宵は天使と輪舞曲を。
§ 13***蜜ごと。
「君はとても美しい」
薄い唇がメレディスの容姿を賞賛する。途端にメレディスははっとした。
手袋の下の骨張った手は水仕事をしていて荒れており、さらにはあかぎれを起こして、ぱっくりと皮膚が割れている。
――いや、手だけではない。
ブラフマン家に客人として招かれているために食事も睡眠もゆっくりとることができているものの、それでも四日前までは睡眠や食事はろくにもらえていない。おかげで肌は青白く、目の下には隈がある。
メレディスは自分があばたも醜い姿をしていることを思い出した。
急に恥ずかしくなって、彼から視線を逸らした。
そうすると先ほどまでたしかにあった美しい新緑の景色が消え去り、一気に色褪せていく。
「貴方はそう言ってくれるけれど、実際は身分ほど大切なものは他にはないのよ。専ら伯爵という立派な立場に置かれている貴方たちにとっては――そしてわたしは容姿すらも醜いわ……」
ラファエルやキャロラインがいけないのだ。
自分も彼らと同等な立場と思わせてくるから……。
――でも実際は違う。
自分は没落した貴族の娘で、彼らは伯爵。身分という天秤は釣り合いがとれるはずがないのだ。
この丘のような見事な新緑の輝きを持ったエメラルドの目から視線を逸らすと、ますます自分という存在が情けなくなっていく。
この場所から逃げたくて右手を胸元で握る。その時、彼女の視界は急に塞がれてしまった。
同時に呼吸さえ難しくなり、口を開ければ、湿った何かが口内に侵入した。
何事かと目を開けると――。