今宵は天使と輪舞曲を。
§ 14***彼女の秘密。
ヘルミナは遙か遠くを見透かせたらいいのに――と思っていた。目を窄め、窓から覗くブラフマン邸の緑豊かな庭園を眺めていた。
それというのも、義理の妹の様子がどうも気がかりになって仕方がなかったからだ。
最近、メレディスの様子がおかしい。このところ、彼女はとても綺麗になっていた。目の下の隈や不健康そうな色白の肌といった外見は変わりはないが、彼女の生まれ持ったグレー色の目が生き生きとしているのだ。
これは彼女が自信を持ちはじめている証拠だ。
彼女は間違いなく、このブラフマン邸で何かを楽しんでいる。そして自分たち家族に隠しごとをしている。
そしてそれにはキャロラインが荷担しているようだ。現にキャロラインは昨日まで自分に近づこうともしなかったのに、今日になって態度を変えた。
ヘルミナが最近のメレディスの変化について本人に尋ねようとすると、彼女自ら図書室を案内すると言いだした。
たしかキャロラインは女性なのに男性といるよりも読書を好む変わり者だという噂を耳にした事がある。彼女にとって本を読むための書斎はいわば財宝が眠る宝庫と同じ。その場所に、会って間もない、しかも滅多に口を利いたことのない自分を案内するなんてどう考えてもおかしい。
――そういえば、キャロラインはメレディスとすすんで食事をする仲のようだ。先ほどの昼食の時――エミリアがメレディスの行儀の悪さを指摘した、あの時だってキャロラインはメレディスに助け船を出すかのように口を挟んだ。