今宵は天使と輪舞曲を。
メレディスに急接近したキャロライン。そしてメレディスを逃がすかのように庇うキャロラインの行動。もしかするとあの人の言うとおり、自分たち一家にとって変化が訪れる兆しなのかもしれない。
それも、良くない変化が――。
ヘルミナはそっと目を閉じた。
ポケットの中に手を伸ばし、その中にある感触を指先で確かめる。もし、メレディスが変化を起こそうとしているのなら、阻止しなければいけない。それを実行するのは他の誰でもなく自分だ。
なにせエミリアとジョーンといったら、この屋敷に招かれてからすっかり腑抜けになってしまった。彼女たちはブラフマン家の客人としてすっかり現を抜かし、過去の貴族だった頃を思い出したかのように毎日を豪遊している。
現実を生きているのはヘルミナだけなのだ。
ヘルミナは、自分の容姿は不器量だと知っていた。
垂れ下がった目尻とぽってりとした頬。体型だっていつも特注品で、気に入ったドレスをすぐに着られず、ふっくらとしている。
だから母や姉のように自分に見合わないものを無理に手に入れようとは思わなかった。お金もドレスも地位も――。そんなものはいらない。況してやハンサムな男性を追いかけたりもしない。
そんなヘルミナも欲しいものはあった。
自分を愛してくれる夫という存在だ。
それはどんな不器量なヘルミナでも得ることは可能なはずだ。