今宵は天使と輪舞曲を。
そこには何の変哲もない小綺麗な部屋があるばかりだ。
「メレディス? 眠っているの?」
奥にあるベッドの布団をめくっても、真っ白なシーツがあるばかりだ。そこに彼女はいなかった。
「これはどういうことかしら? メレディスがいないわ。体調が悪いんじゃなかったの?」
問い詰めるようにキャロラインに尋ねると、先ほどの態度とは打って変わって口をへの字に曲げた。彼女が何も答えないつもりなのは分かっていたが、それでもヘルミナは尋ねずにはいられなかった。
だって許せない。
メレディスがヘルミナたちのところに突然転がり込んできてからというもの、身の周りに起きるすべてが悪い方に転がってしまった。
父親が亡くなり、収入が減ってしまったのに追い打ちをかけて居候がもうひとり増える。
もしかすると彼女が不幸を連れてきたのかとさえ思うほどに――。
彼女さえいなければ、父親はまだ健全で自分たちの屋敷も美しいまま、没落貴族になることなく爵位を保ったまま、優雅な時間を過ごせていたかもしれないのだ。
そう思っているのはヘルミナだけではない。エミリアやジョーンも同じだった。自分たちデボネ家の人間は皆、メレディスに腹を立てている。彼女さえいなければすべてが上手くいくような気がして仕方がないのだ。実際、彼女の両親も命を落としている。彼女は疫病神以外の何者でもない。
だから母親もメレディスを使用人のように扱き使ってきた。
――それなのに……。