今宵は天使と輪舞曲を。

 メレディスが口を開け、何やら言い訳を唇に乗せるが、ヘルミナは彼女の発言を許さなかった。続けて彼女に言い聞かせる。

「貴女、遊ばれているのよ。ねぇ、もういいでしょう? わたしたちの屋敷に帰りましょう? 貴方がお母様に言えばもしかすると滞在時間が少なくなるかもしれないわ」

「遊ぶなんてとんでもないわ、相手はわたしの兄なのよ! 兄はそんな不誠実な人間じゃないわ!!」
 キャロラインは両肩を怒らせ、声を張り上げた。
 彼女が怒るのももっともだ。家族を馬鹿にされたのだから仕方がない。けれども今のヘルミナにとっては彼女が怒ろうがどうしようがどうでも良かった。
 ただ彼に会いたい。
 会って彼に触れられ、愛される喜びを感じたい。
 しかしメレディスがラファエルを拒まなければ自分は永遠に彼と結婚できず、独身を貫き通さなければならない。それだけはどうにか阻止しなければならない。

「ごめんなさい。ただわたしはこれ以上メレディスに傷ついてほしくないだけなの」

 母親も姉もこの生活が気に入ってしまっている。けれども彼女たちは明らかにブラフマン家に歓迎されていない。ここで気に入られているのはメレディスだ。
 社交パーティーに行きたい。彼と会い、愛を育んでいかなければいけない。彼だってそれを望んでいるはずだ。自分たちには一緒になる未来が見えているのだから。
 何か――メレディスがこの屋敷を離れたがる方法を何か考えなければ!

 例えば、メレディスがラファエルに嫌われるよう仕向ける作戦を――。



《彼女の秘密・完》
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