今宵は天使と輪舞曲を。

§ 04***ハンサムな男性。




 ブラフマン伯爵家が所有する領地はイギリス、ロンドン郊外にある。なだらかな道を進めば、広大な田園や果樹園が広がり、訪れる人々の目を潤すのだ。


 今夜は下弦の月だ。点々と輝く星々に囲まれ、もの悲しげに淡く輝いている月が闇夜に浮かび上がっている。その月を追うようにして開けた道を進む一台の馬車があった。

 車輪が大小様々な石を踏みつけ不規則に揺れている。四人掛け用の馬車に乗り込んだデボネ家一行は招かれたブラフマン伯爵邸へと急いでいた。

 馬車の中は緊張と期待、それから不安で満ちていて、四人は無言だった。

 相変わらず威厳たっぷりなエミリア・デボネは口の端をひん曲げ、目の前に座っているメレディスを目の敵にしている。まるで死刑囚を監視する折檻人であるかのように、彼女のつり上がった眉尻がひくひくと痙攣(けいれん)していた。

 腰まである自慢の金髪を見事にまとめ上げているおかげで首は普段より細く、剥き出しの肩胛骨を締め上げるようにぎゅっと上がった肩幅がより狭く見える。どうやら今夜の彼女は自分が如何に清潔なのかを人々にアピールするつもりらしい。

 彼女の性格には不似合いなほどの控え目なクリーム色のドレスを着ていた。

 けれども気むずかし屋で自分よりも見窄らしい容姿の相手をとことん見下ろさないと気が済まない彼女の威圧的な部分は青い目にありありと表現されている。


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