今宵は天使と輪舞曲を。
自分のふっくらとした体型にコンプレックスを持っていたし、その体型を隠すためのコルセットはきつくて息もできない。本人がこんなに頑張っているというのに、世間の男性からの評判は悪かった。
彼らは皆、美人な姉ばかりに目を向けていて、ヘルミナはいつも姉の引き立て役。後ろ指をさされてばかりいた。
そんなヘルミナだが、愛する人ができた。彼と一緒になるためには両家の親に認めて貰わねばならない。
このまま手を拱いているばかりでは自分は想い合っている彼と結婚できるどころか、一緒に楽しいひとときを過ごすことさえ叶わないのだ。
そういうこともあって、焦燥感に駆られたヘルミナは、愛する彼に手紙を送った。
――それがどうだろう。
今、彼女は信じられない気持ちでいっぱいだった。
ヘルミナが会いたいと手紙で告げるや否や、彼はすぐさま一緒にひとときを過ごすための宿を取ってくれたのだ。たしかに、この宿は上品とは言い難い。それでもゴシップ誌から逃れるために彼が用意してくれたのだと思えば窮屈さよりも嬉しさの方が大きい。
どこから吹く隙間風に蝋燭のオレンジ色の灯りに照らされた部屋が揺れる。まだ夕時ではあるものの、ひと目につかないこの小さな宿はどこも薄暗い。部屋もシングルベッドがなんとか入るくらいの広さだった。とても小さな空間ではあるが、ヘルミナは少しも気にならなかった。