今宵は天使と輪舞曲を。
好きな人と一緒に居られるのなら、ここがたとえ地獄の果てであっても構わない。ヘルミナにとって彼がすべてで、彼こそが楽園そのものなのだ。
「何を考えているんだい? ぼくがこんなに君を求めているっていう時に」
ヘルミナはベッドの上に横たわり、全身に彼の口づけを浴びる。
「ぼくもだよ、ダーリン」
「でも、ラファエルはメレディスを気に入っているみたいなのよ。彼の妹のキャロラインも仲を取り持つ気満々だし、わたし、どうしたらいいの? このままじゃ、貴方と一緒にいられないわ……」
大好きな彼と離れたくない。ヘルミナは分厚い胸の中で項垂れ、涙を流した。
しっとりと湿り気を帯びた彼の体はまるで鋼のように雄々しく、凛々しい。腕の中にすっぽり収まると、ヘルミナはますます涙を堪えきれなくなっていた。
「大丈夫、きっと機会は見つかるよ。まだラファエルは彼女に求婚していないんだろう?」
「ええ」
「貴族の男っていうのは特に今から仕留めようとしている意中の女を他人の男に傷物にされるを嫌うんだよ」
「それって……何をする気なの?」
「それとなく君の義妹をできるだけひと目につかない場所へ誘い込むことはできる?」
ヘルミナは尋ねたが、彼は詳しくは答えなかった。
「ええ、それは、できるけれど……」
「だったら問題ないよ。後はぼくが引き受けよう。君が心配することなんてひとつも無いんだから、ね?」