今宵は天使と輪舞曲を。

 整った容姿だから余計にそう思わせるのかもしれないが、凍てつくような氷を想像させる冷ややかな眼差しは冷淡だった。

 そんなエミリアの隣にいるジョーンもまた、今夜はいつもよりずっと気合いが入っていた。

 炎のように燃え上がるワインレッド色のドレスは女性らしい膨らみがある胸元から引き締まったくびれを強調させ、足下はまるで薔薇の花のようにふんわりと広がっている。

 剥き出しになっている華奢な両肩は緩やかなカーブを描き、ほっそりとしたシルクのような肌触りをした細い腕が流れている。

 エミリアと同じ金色の髪は頭の上で緩やかに巻かれ、半分開いている窓から入ってくるそよ風に遊ばせていた。

 悔しいが、やはり彼女の装いは完璧だと言わざるを得ない。男性なら誰だって塞ぎたくなるだろうふっくらとした紅を引いた唇に、ほんのり紅潮している頬は恥じらいを見せている。

 長い睫毛に縁取られた青い目は若さゆえの期待に輝き、自信に満ちていた。今夜もまた、あらゆる紳士を魅了して主役を演じるに違いないとメレディスは思った。



 対するヘルミナはメレディスの隣で唇を噛みしめていた。

 それというのも、ジョーンと同じサイズのコルセットはやはり彼女にはまだ早すぎたせいだ。

 たしかに、エミリアから三週間前に言い渡された死の宣告にも似た命令を彼女は忠誠心でやり遂げていた。


< 23 / 358 >

この作品をシェア

pagetop