今宵は天使と輪舞曲を。
ラファエルを見つけるのは容易ではないと思っていたメレディスだったが、予想よりもずっと早くに見つけることができた。
そこは厩舎の入口だった。見知らぬ女性と何やら会話し、楽しそうに笑みを交わして抱き合う光景を目にしてしまったのだ。
ラファエルは一緒にいた女性と親しみ深そうに何やら耳元で囁いている。女性も楽しそうに相槌を打っていた。
……ああ、なんということだろう。
彼の本命は彼女だったのかもしれない。
自分と交わした深い口づけも、それ以上の行為も――。
『美しい』と言った言葉でさえ、すべて戯れのものだったのだ。
悲しみよりも深い絶望。彼ならば自分のことを理解してくれると思った。ピッチャー男爵のようにメレディスをお飾り人形のような扱いはしないと思い、信じて疑わなかったことへの落胆。
――やはり、彼には想っている女性が他にいたのだ。
ラファエルを信じていたことがメレディスの胸を引き裂いた。
胸が痛くて涙も出ない。
なぜ、自分が一番だと思ったのだろうか。
思い上がりもいいところだ。ラファエルと女性の抱擁している姿が脳裏に過ぎる。そのたびに羞恥心が増す。
それからの行動はあまり覚えていない。気がつけば馬に乗り、ブラフマン邸の書斎に立ち竦んでいた。窓際にはキャロラインが腰掛け、心許ない様子で手元にある分厚い本を眺めていた。ヘルミナはいないようだ。恐らく自室に戻ったのだろう。
彼女はメレディスの存在に気がつくと立ち上がり、向き合った。