今宵は天使と輪舞曲を。
§ 03***好機。
屋敷を出て行く彼女の丸まった背中が見える。
窓辺で外の光景を見ていたヘルミナはにやりとした。
今日はなんとついている日だろう。願っていた好機がまさかこんなに早く訪れるなんて――。
彼の提案どおり、外に人を置いて正解だった。
やはり自分には彼しかいない。彼に相談したからこそ、今回の作戦が上手くいくのだと、ヘルミナは確信した。
あとは彼が雇ってくれた彼らが上手くやってくれればそれでいい。
ヘルミナが彼と一緒になるために計画したのはこうだ。
金で雇った彼らがメレディスの顔に深い傷をつける。顔にできた傷を見たラファエルはメレディスを嫌悪し、自暴自棄になったメレディスは愛娘のキャロラインと喧嘩をする。ブラフマン家から毛嫌いされれば屋敷を出されるだけだ。自分は屋敷に戻り、社交界を通じて逢瀬を繰り返し、晴れて彼と一緒になれるのだ。
そうするためには、ヘルミナはメレディスに、ラファエルの心が彼女にないと疑わせるしかない。
そして一人になったメレディスを金で雇った彼らが拐かし、彼女の顔に傷をつける。そしてラファエルが顔に深い傷を負ったメレディスを見て嫌悪する。――という筋書きだ。
身分が高い男性――特に伯爵や公爵くらいになると世間体も重要視される。当然、妻になる女性が顔に醜い傷を負えばすぐに興味を失う。ラファエルとメレディスの気持ちを離れさせるのはとても簡単だった。
そしてメレディスを一人きりにさせるのはもっと簡単だった。