今宵は天使と輪舞曲を。
「それは……だって……あの子は見窄らしいわ。誰も拐かさないわよ」
ヘルミナは正当な意見を言ったと思って周りを見たが、皆、口を開けたまま眉間に深い皺を刻ませたまま動かない。
なぜここの人間は示し合わせたかのように同じ表情や仕草をするのだろう。ヘルミナは理解できずに顔を顰めた。
「馬車の準備が整いました」
「さあ、行きましょう!」
指示を受けたメイドが戻って来るなり、息を吹き返したように慌ただしく階段を駆け下りていく。
「待って、わたしも行くわ!」
こうなったらどうにかして誰よりも早くメレディスを見つけ、何事もなかったかのように振る舞い、ラファエルと不仲になってもらわねばならない。
キャロラインに続いてヘルミナもまた小走りで向かった。
《好機・完》