今宵は天使と輪舞曲を。
「今から少し前、メレディスがここに来たのよ! その時に兄さんが女性と抱き合っていたのを見たって言っていたわ!」
「なんだって?」
メレディスがここを訪れた。それは嬉しい内容ではあるものの、次の質問がラファエルの胸に不安を過ぎらせる。
キャロラインの言う、密会とはどういうことだろうか。ラファエルはキャロラインに尋ねると、彼女はますます顔を赤くさせた。彼女の頭で水が沸騰するだろうほどに――。
「密会なんてするわけがないだろう?」
ラファエルは女性が苦手だ。だからこそ、母親が勧める社交パーティーも参加を断り続け、未だ独身を貫いている。しかしそれはキャロラインも知っていることだ。ラファエルがどれだけ貴族の女性に嫌気を差しているかは妹である彼女が一番良く知っていることだろうに。今さらわざわざ女性との色恋沙汰を疑わなければならないというのだろうか。
「どうなの? ラフマ?」
ラファエルが頭を横に振っても信じられないのか、彼女はラフマに尋ねた。
今、自分はそこらにいる貴族の男たちのように扱われている。
ラファエルにとってはそれが一番信じられないことだ。
「密会だなんてとんでもない。坊ちゃんはただ……」
「ラフマ!!」
ラファエルはラフマの名を強く呼んで口を噤ませた。しかし、それはキャロラインにとってますます疑う材料を作るようなものになるとは理解していた。
――とはいえ、これに確信が持てない今はまだ、たとえ大切な家族であっても秘密にしておく必要があるのだ。