今宵は天使と輪舞曲を。

§ 05***拘束。




「今時分にどうしたのかな、お嬢さん?」
 突然掛けられた声にはっとして顔を上げれば、二人連れの男がいた。薄暗くて顔ははっきりと見て取れないが、かけられた言葉とは裏腹に気味の悪い雰囲気だったからすぐに防衛本能が働いた。

 メレディスは唇を引き結び、体勢を整えると起き上がり、男たちから逃げるために元来た道へと一歩を踏み出した。しかし彼らはあっという間にメレディスを取り囲んだ。

「人を呼ぶわよ」

 恐怖が彼女を襲う。けれどもここで怖じ気づいたことを相手に悟られれば彼らの思う壺になるのは知っていた。だから冷静に反応しようと両手に拳を作って顎をつんと引き上げる。どうにか自制心を保っていた。

「叫んだところでどうにもならんさ」
「離して!」
 メレディスが声を上げようとした時、男のひとりが動き、布で口を塞いだ。途端に視界が明るさを増して目が眩んだ。それというのも男のひとりが火の点いたランプを顔間近に持ち上げたからだ。用意が調いすぎている。まさかとは思うが、この近辺で拐かしを狙っていたのだろうか。
 右端で炎に照らされたナイフが怪しい光を反射させている。蝋燭の炎がメレディスの顔を照らされるから眩しすぎて目を窄めた相手の顔が上手く見られない。それがもどかしい。

「さっさと終わらせるぞ」
「静かにしろ! ほんの少し顔に傷をつけるだけだ、すぐに終わる」
 メレディスが抵抗を図るものの、もう一人が抵抗できないようメレディスの体を跨いだ。




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