今宵は天使と輪舞曲を。
楽しい外出を満喫した彼女たちは有頂天になってラファエルを取り囲んでいる。彼には気の毒だが、迷惑そうにしていたラファエルを見るのは面白かった。
メレディスは、キャロラインの今夜一緒に寝ようという提案に心から感謝した。
実は心細かったのだ。僅か数時間前に自分の身に降りかかった恐ろしい出来事が頭から離れない。得体の知れない男たち二人と野生の猪。続けざまに二度に渡って身を切るようなおぞましい体験をした。
野生の猪に襲われたのは偶然だろう。けれどあの拐かしの男二人は明らかにメレディスを狙っていた。
メレディスはなぜ、自分が襲われたのかはまったく心当たりもないが、彼らは自分を襲う直前、たしかにメレディス本人であるかを尋ねてきた。それは標的があらかじめ決まっていたからだ。しかもまったく面識もない連中が、であう。
ラファエルは明朝拐かし二人を探し出すと言ってくれたが、猪に命を奪われているか、猪から逃れ、逃げ果せたかのふたつにひとつ。
もし、猪から逃れられたとするならば、目的遂行のためにまたメレディスが襲われる可能性がある。彼らがなぜ、財産もない没落貴族と化したメレディスを襲ったのかは謎だが、それがまたさらにメレディスを不安にさせてくる。
ここは見窄らしいデボネ家ではない。家令もいるしメイドたちも常に行き交っている。安全性が行き届いたブラフマン伯爵の屋敷。それに今はラファエルという心強い男性だって滞在している。