今宵は天使と輪舞曲を。
安全だと理解している筈が、いざひとりきりになると発狂してしまいそうになる。
もちろん、メレディスはキャロラインに、男二人に襲われたことを伝えていない。知っているのは野生の猪と出会したことだけだ。そんなキャロラインだが、メレディスが苦しんでいるのを理解しているのだろう。声をかけてくれた。それがどんなに心強いか。
ラファエルが女性と一緒にいるところを見たメレディスは当初、誰も信じられなくなってキャロラインに酷いことをたくさん言ったのに、彼女はメレディスを気遣ってくれているのだ。胸の詰まる思いだ。
キャロライン・ブラフマンという女性は、これまで生きてきたメレディスの人生の中で出会った、どの女性よりもずっと信頼するに足る人物だとあらためて理解した。
――ここはキャロラインの寝室だ。
彼女の部屋も可憐で純粋無垢なその愛らしい性格同様に可愛らしく、青い壁紙に黄色い小花柄が散っている。
そんな二人はひとつのベッドの上で寝転んでいた。
「キャロライン、わたし。あなたに謝りたいの。酷いことを言ってしまったわ」
メレディスが口を開くと、キャロラインはメレディスの手の甲を優しく叩いた。
「貴方の言うとおり、兄さん。どうも何か隠しているようなのよ。ただそれが何だかよくわからないのよね」
彼女は眉間に深い皺を寄せて天井を見つめていた。彼女ほど愛情深くて優秀な探偵はまずいないだろうとメレディスは思った。