今宵は天使と輪舞曲を。

「そのことならもういいのよ。わたし、ラファエルが誰を想っているのかは分からないけれど、きっと素敵な女性だと思うから、この気持ちにふたをすることに決めたの……」

 諦めきれるかどうかは判らないけれど、ラファエルの意中の女性はとても美しい人だろうことは理解していた。
 だってあんなにパーフェクトなラファエルなのだ。その彼の心を射止めた女性もまた、容姿も心も美しいに違いない。

 片や自分は、といえば――独りよがりで陰気な、じめついたナメクジのような人間だ。勝ち目のない不毛な争いなんてするだけ無駄だ。だったら、ラファエルの幸せを応援する方がずっといい。
 胸が苦しくなるのはきっと今だけだ。そのうち傷も癒えるだろう。
 彼が身を固め、心に決めた女性とあたたかな家庭を築くその姿を見さえすれば、きっと諦めもつく。


「諦めてはダメよ! 今日の午後。兄さん、貴方が居なくなったと話したら血相を変えて出て行ったのよ? 貴方の他に好きな人がいるなんて有り得ないわ」

 鼻息を荒立てて話すキャロラインを見ているとこちらまで元気になれる気がした。今夜あったことは辛いことでもあるが、こうやって人の有り難みを知るのも良い。メレディスは少し微笑んでみせた。

「そんなことよりキャロライン、わたし。貴方にすごく酷いことを言ってしまったわ。本当にごめんなさい」

「いいのよ、気にしないで。もしわたしがメレディスの立場ならきっと同じことを考えるはずだもの。わたしの配慮が足りなかったの。わたしこそごめんなさい」


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