今宵は天使と輪舞曲を。
どうも彼女たちは自分たちのことを他に類を見ないほどの淑女だと思い込んでいる節がある。尖った顎の先を突き出し、当然のことのように話していたが、ラファエルはメレディスのことをまるで自分たちの所有物であるかのように振る舞う二人の言動が不快で仕方なかった。
いつもそうだ。この二人は特に彼女の何もかもを管理しようとする。その態度も考え方も、すべてがメレディスの自信を喪失させていくのだ。彼女が自分の意見を言えなくなったのもすべて、この二人が元凶であることがよく判る。
「ミス・ヘルミナの姿も見当たらないが、彼女も被害に?」
彼女たちの言動によって、ブラフマン家に生まれた不穏な雰囲気を察知したモーリスは、もう一人姿が見えない人物の名を口にした。モーリスもまた、ラファエルと同じようにヘルミナの姿が見えないことを不思議に思ったようだ。
「あの子は心優しい子ですの。メレディスが猪に襲われたと聞いてショックなのでしょう。今朝から部屋に引き籠もってますわ」
ヘルミナの発言に反応したラファエルは眉間に皺を作った。
昨夜の反応から察するに、ヘルミナの言動は明らかにメレディスに寄り添ったものではない。思い返してみてもメレディスが襲われたと聞いてショックを受けている様子は微塵にも感じなかったのだ。
その彼女が部屋に引き籠もるとはいったいどういうことだろうか。
何かが引っかかる。