今宵は天使と輪舞曲を。

 キャロライン曰く、彼女が屋敷を出た理由はラファエルが他の女性と会っていたからだと言っていた。どうもメレディスはラファエルに遊ばれていると思っているらしいのだ。もしそれが事実だとすれば、早々に誤解を解かねばならない。

 ラファエルが大の女性嫌いであることは当然ながら家族の誰もが知っていることではあるし、社交界でも女性と一切関わりを経っているのも有名でもある。――メレディス・トスカを覗いては、であるが。――とはいえ、メレディス本人はそのことを知らないのかもしれない。なにせ彼女は社交界から爪弾きにされている存在だったから。

 そういうことで誤解を解消せねばならないのだが、ラファエルにも考えがあり、すぐには動きたくはなかった。

 自分が女性と関係を持つことで彼女が傷ついているのならば、それは裏を返せばこの一件を解決できるのもラファエルしかいないと自負できる。

 彼女がまだラファエルと会話する気持ちがあるのなら、の話ではあるが。
 そういうことで、自分一人ではメレディスと会話できる自信もなく、付き添いを提案してくれた兄にラファエルは深く感謝していた。

「ところでラファエル、ミス・ヘルミナがそんなに気になるのか?」

 書斎に入ったグランは、ドアが閉まると早速口を開いた。
 ラファエルは窓から見える庭の景色に目を細めた。

「――いや、ミス・ヘルミナは何かとミス・トスカの存在を気にしているように感じてね」


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