今宵は天使と輪舞曲を。
「ところでメレディス、思い出すのも辛いとは思うが、昨夜のことで君に聞きたいことがあってね」
グランは机の上に屋敷周辺の地図を広げた。
「この土地周辺の地図だが、当初はどの辺りで例の男連中と猪に出会したのかもう一度詳しく聞いてもいいかい?」
「この辺りです」
メレディスは小さく頷き、指差しをして答えた。彼女は自分の容姿に自信が持てないのだろう。常日頃から手にはレースのグローブをはめている。
――とはいえ、出会った頃の当初と比べてかなり薄手のものになっている。ラファエルは、彼女が自分に自信を取り戻しつつあることを感じ、心の奥底では喜んでいた。
昨夜、たしか彼女が猪に襲われているのを見たのは屋敷から少し離れた林の入口付近だった。
「湖に行く途中にある林の入口付近に間違いない」
ラファエルはメレディスに続いた。
当然、真っ先に探索したが、猪の足跡以外、手がかりらしきものは何も見つからなかった。果たしてこれがいったい何を示すのか。
「彼らは見つからなかったのね」
次に質問したのはメレディスの方だ。
睫毛が陰を作り、儚げに見える。
彼女はラファエルとグランの顔を交互に見て落胆のため息をこぼした。
「骨すらも、ね」
ラファエルは胸を痛めながら正直に打ち明けた。
メレディスは心細いのだろう。それでもどうにか気丈に振る舞おうと肩を窄め、悲しみに染まった笑みを唇に浮かべた。
「問題はなぜ君が狙われたのかだ。誰かに妬まれているとか、何でも良い。心当たりはあるかい?」
グランも尋ねる。