今宵は天使と輪舞曲を。
「メレディス、君は自分が思っているほど見窄らしくないよ」
それからグランはメレディスに視線を戻し、彼女を宥める作業に取り掛かった。
ブラフマン家の男は一族の女性への気配りを忘れてはいけない。そしてきっと近い将来彼女は自分たちの一族に加わることを彼は予見していた。グランは予言者でもなんでもないが、幼い頃から誰よりもすぐ側にいた弟のことならあらかたのことは理解できていた。
おそらくレニアは彼女が一族に加わることを反対するだろう。けれどもラファエルは一歩も譲らないことも分かっている。
なにせラファエルは家族の中で誰よりも頑固な部分があるのだから――……。
「いいえ、わたしはあばたも醜い没落貴族よ。でも、妬まれる理由があるとすれば、この屋敷に滞在させていただいているということかしら」
「その件では何も得るものはないだろう」
メレディスが答えるが、今度はラファエルが首を振る番だった。
しかしメレディスは思った。もしかすると、ラファエルは自分がどれほど魅力的で世の淑女たちが彼に近づきたいと思っているのかを知らないのだろうか、と。
だからメレディスは小さく苦笑を漏らしながら頷いた。
「そうね、わたしはまた襲われるのかしら」
「そんなことはさせない」
ラファエルはいっそう大きな声でそう断言した。
その言葉にメレディスははっとして彼を見上げる。すると、力強いエメラルドの目とぶつかった。その目は濃い緑色をしていたことに気がついた。深い緑色の目をしている彼には意志の強さが感じ取れる。