今宵は天使と輪舞曲を。
もしかすると、キャロラインが言うとおり、彼女も自分とのことを少しは考えてくれているのだろうか。三度の口づけを交わしたことで少なからずとも行為を寄せてくれているのは知っている。けれども彼女にとってラファエルは初めて接触した男性という立場にすぎないと思っていた。
果たしてラファエルがプロポーズした時、彼女は頷いてくれるだろうか。
「兄さん? 話は終わった?」
ドアの外からキャロラインの声がする。妹が声をかけてくれたおかげで重たい空気が掻き消された。
「ああ、丁度終わったところだよ」
グランがドアを引くと、キャロラインが中に入ってきた。
グラント抱擁を交わし、再会を喜んだ。それからメレディスとラファエルを交互に見る。どうやら偉大なる妹は二人の間に流れる異様な空気を察知したようだ。
「ぼくたちは暫くこの屋敷に滞在させてもらうよ」
「まあ!」
妹の考えそうなことは分かっている。メレディスと自分をくっつけたがっているのだ。彼女はどうやってもメレディスと従姉になるつもりだ。今となってはその目論見も至極真っ当のようにも思えるからおかしなものだとラファエルは苦笑する。
「兄さん?」
「父さんと母さんに話してくるよ」
キャロラインは書斎から出て行こうとするラファエルに尋ねると、振り向かずに説明し、グランと共に部屋を後にした。
なにせこれから母を説得しなければならない。
ブラフマン家のボスは彼女である。説得にどれだけ骨が折れるだろうかとラファエルは考えると頭痛さえもしてくる。
ラファエルは大きなため息をつきそうになるのを堪えて両親が居る三階へ向かった。
《ラファエルの災難・完》