今宵は天使と輪舞曲を。

§ 08***ヘルミナの企み。




 ヘルミナは今朝方ラファエルとグランが狩りに出かけてからというもの、ずっと生きた心地がしなかった。
 ――いや、正確にいえば昨夜、キャロラインを追いかけてラファエル・ブラフマンの屋敷に向かってからずっと、だ。

 しかし二人が手ぶらで戻って来るのを窓越しから確認するとほっとため息が漏れた。どうやら彼らはメレディスを襲った犯人を捕まえることはできなかったらしい。猪からも無事逃げ果せたのだ。
 神様はやはり自分の味方をしてくれている。

 残念ながらメレディスの顔に傷を付けるのは失敗に終わったが、彼らが捕まっていないのならば今のところは安心していいだろう。

 けれどもこれで引き下がることはできない。
 自分はどうやっても彼と一緒になりたい。それは彼も同じ気持ちのはずだ。

 他人が役に立たないならば自分が動くまでだ。どこかで隙は必ず出てくる。その時が勝負だ。ヘルミナは顔を歪めた。



《ヘルミナの企み・完》
< 274 / 348 >

この作品をシェア

pagetop