今宵は天使と輪舞曲を。
§ 09***ラファエルの決意。
「残念ながら彼女との会話で得られた情報は少なかった」
三階の居間に戻ったラファエルとグランは真向かいに座っている両親と向き合った。ここには例によって家族以外の誰も邪魔が入らないよう家令たちにはしっかりと申しつけている。
ラファエルは、メレディスを襲ったのは男二人組だったが周囲が薄暗く相手の顔は分からなかったこと。彼女がメレディス・トスカであるかを確認したこと。犯人は別にいること。それらのメレディスから得た情報を二人に話した。
「知り合いに探偵がいる。彼に頼んで調べてもらおうと思う」
グランはそう答えた。彼の表情は固く、開いた口はまた引き結ばれている。その姿はいかに難しい問題なのかを物語っていた。
周囲の雰囲気も重く、明らかに情報が少なすぎるということはその場にいる誰しもが理解していた。
沈黙が続く中、ラファエルはまた口を開いた。
「身を固めようと思う」
「ミス・トスカだね?」
ラファエルが差す女性が誰なのかを察したモーリスは静かに尋ねた。テーブルの上で握っている手に力が入った。
やはり家族はラファエルが誰に想いを寄せているのかは知っていたようだ。モーリスは満面の笑みを浮かべ、グランが頷く中、たったひとり、反応が違った。
「まあ! それはダメよ」
レニアは身を乗り出して首を左右に振る。
「なぜ? 母さんはあんなに結婚しろと散々社交パーティーを勧めてきたじゃないか」
ラファエルが尋ねると、レニアは口を開いた。