今宵は天使と輪舞曲を。

§ 10***密やかな誘い。




 カーテンの隙間から陽光が漏れている。
 昨夜もあまり眠れなかったと、メレディスは欠伸をした。

 ベスに洗面器と水を用意してもらい、顔を洗ってドレスを身に着ける。
 たったそれだけのことなのに、暗い気分はほんの少し消える。それでもこれからのことを考えると気持ちは重たかった。

 昨日の夕食も、襲われてからというもの連日に渡って食事を断っていたのだが、今日こそは朝食に参加しなければならない。なにせメレディスが拐かしに遭った一昨日の件についてラファエルとグランが動いてくれているのだ。ブラフマン家には日頃お世話になっているのだからお礼も兼ねて食事に参加するのは道理だろう。

 そう思うのに、皆の前に集うと思えば気が重くなる。だってそこには絶対にエミリアやジョーン、それにヘルミナもいる。彼女たちは寄って集ってメレディスを集中攻撃するに違いないのだ。
 人目のない場所でならまだしも、心優しいキャロラインや、心密かに想っているラファエルにまでその姿を曝すとなると胸が苦しくなる。

 まるで処刑台に向かう囚人のような気分だ。

 メレディスは逃げ出したかったが、ドアをノックする音が聞こえて心臓が跳び上がるかと思った。
「メレディス? 準備はできている?」
 キャロラインだ。地獄への案内人が来たとメレディスは思った。実際には大きなアンバー色の目が印象的な可愛らしい妖精なのだが――。


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