今宵は天使と輪舞曲を。

 もしかすると、彼は一昨日の事件から自分を慰めるためにこうして寄り添っているのだろうか。――だとしても、彼の態度は少し行き過ぎな気がする。

「メレディス、聞いているのですか!」
 またもやエミリアの耳を劈く耳障りの悪い声が空気を裂いた。
 伯母の自分を責める姿はどこにいても同じだ。せめて他人の家にいるくらいは自分を責めないでほしかった。これでブラフマン一家には自分がいかに不出来な人間であることを実証されてしまったのだと目を瞑り、暗いどんよりとした気持ちになった。

 だから皆と食事をするのは嫌だったのだ。メレディスは羞恥から下唇を噛みしめた。

 キャロラインは抗議しようと口を開けたが、それよりも先に口を開いたのは、メレディスも予想していなかった人物だった。

「いいえ、事件を起こしてしまったのはこちらの不手際。謝るのはわたくしたちの方です。ミス・トスカ、本当にごめんなさいね」
 レディー・ブラフマンだ。彼女はまたしてもメレディスに助け船を出したのだ。
 メレディスは驚いた。だってレニアは明らかに自分を嫌っているとばかり思っていたからだ。その証拠に、彼女もまた自分を品定めするような目で見ていた。だからてっきりエミリアと同じになって話を進めるか、それとも傍観するかのどちらかだと思ったのだ。それはキャロラインも同じようで、彼女もまた目を丸くしていた。

「――い、いいえ、わたしがいけなかったんです、身の程もわきまえず日が暮れる頃に出歩いてしまったのです。申し訳ございませんでした」
 メレディスは慌てて首を振った。


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