今宵は天使と輪舞曲を。
けれどもそのことに気づいていないのは本人たちばかりだ。よりにもよってブラフマン家の人間に謝罪されてしまったと居心地を悪くしたエミリアは慌てたらしい。
「いいえ、謝罪なんてとんでもないことですわ、わたくしも外出をしていたのですから――」
小さく首を振って彼女は答える。
たしかに、彼女たちは外出していた。それもこの屋敷の資産を使って――。
おそらくレニアはそう口にしたかったのだろう。
メレディスはレニアの細い眉が引きつるのを見逃さなかった。
「だったらいいじゃない。わたしお腹空いたわ。食事にしましょう?」
キャロラインはわざと大きな声で言った。その口元を扇子で必死に隠している。目尻には涙が溜まっていて、今まさに吹き出しそうな姿が見て取れる。
ラファエルとグランは肩を揺すっている。どうやら笑いを堪えているようだ。モーリスは紳士を務めあげた。笑うのを堪えるために背筋を伸ばすと手を叩き、メイドに食事を運んでくれるよう采配した。
ラファエルはメレディスの背後から一歩下がると隣の椅子に腰掛けた。――同時に彼の唇が動いた。
「この後、例の湖で会おう」
耳元にそっと囁かれる。
彼の声はとても甘く、耳孔に触れた吐息はくすぐったかった。
メレディスがはっとして顔を上げ、ラファエルの方を見ると、彼はもうすっかり元の表情に戻っていて、正面にいるエミリアに視線を向けている。
――彼はいったい何と言ったの?
もしかして自分の聞き間違いだったのだろうか。