今宵は天使と輪舞曲を。
彼の側にいたいという強い想いが生み出した幻聴ではないのか。
メレディスは両親が亡くなってからこの九年間、ずっと一人で生きてきた。
誰にも頼ることが出来ず、ただ自分のみしか信じることを許さなかった。
それなのに、ブラフマン邸で過ごすうち、友人とも呼べる存在が現れた。
一昨日前には男二人組や猪に襲われ、ラファエルが探しに来てくれもした。実はこの一件から、メレディスは男性の腕の中にいることがどれほど力強いのかを知ってしまった。
けれどもそれは彼だからこそであり、他の男性に抱きしめられても安心感は得られない。
ラファエルとふたりきりになることを望んでいた。
口にさえしていないが、本当はとても心細い。たとえ命を奪われないと分かっていても、いつまたあのような連中が現れるかもしれないと考えればぞっとする。
力強いラファエルに守ってもらえればどんなに心強いだろう。
彼がすぐ側にいてくれたなら、駆けつけてくれるなら、どんなに心が安らぐだろう。
けれどもそれはやはり自分の幻聴かもしれない。だって隣にいる彼はメレディスに見向きしない。視線はレニアとジョーンにある。
もしかすると彼はジョーンに気があるのではないか。
自分に近づいたのはジョーンに嫉妬心を芽生えさせるためなのかもしれない。
たしかに、外見の美しさはどの貴婦人よりも美しい。若さゆえの体の奥から漲るエネルギーは目に現れ、光輝いている。メレディスみたいにぼろ切れのような肉体ではなく、美しく手入れされた白い柔肌に腰まである艶やかな髪は至って健康的で女性らしい。