今宵は天使と輪舞曲を。
屋敷を出る時に例の連中たちに襲われないかも不安になったが、ブラフマン家には頼もしい若い男性が二人もいる。それに今日の空は晴れやかで青空が広がっていた。それにラファエルが誘ってくれたのだ。その辺りの治安も確認済みだと思って良いだろう。
そこで彼女が思い出したのは、キャロラインの言葉だ。
屋敷を出る数十分前のことを思い出したメレディスは天を仰いで呻った。
彼女は地獄耳だった。今からラファエルと会うことをしっかり聞いていたのだ。戻ってから詳しい話を聞かせてほしいとせがまれた。
詳しい話も何も、ラファエルとはこの先何の進展もないのに、である。
キャロラインはメレディスとラファエルが結ばれることを夢見ているのだ。
メレディスは小さく首を振った。
自分はキャロラインのような愛らしい容姿でも陽気な性格でもない。況してや伯爵家の人間でもないのだ。現実を受け入れることに専念しなければならない。
足早に木々を抜けるとそこには美しいライトブルーの湖が見える。斜め上に降り注ぐ陽光が水面に反射する。
まるでダイヤモンドのように光輝くその光景はいつ見ても圧倒される。
初めて見た時もそうだったが、行き来を繰り返すと愛着が湧く。この湖がとても好きになっていた。
大好きな湖が辺り一帯に広がる幻想的な光景の中に、まるで絵画のように佇む長身の男性がいた。
朝食でも彼を見たが、こうして自然の中に溶け込む姿はこの世の者とは思えないほど美しい。