今宵は天使と輪舞曲を。
「まあ!」
中身を見た瞬間、またもやメレディスの心臓が大きく弾んだ。
中身は忘れもしない。美しい装飾に施されたエメラルドのブローチだ。
これもまた叔母に売られた代物だった。
「どうして貴方がこれを知って……」
口にした直後、あるひとつの出来事が蘇った。
――たしか、そうだ。
一ヶ月以上も前。社交パーティーで、たしかメレディスはピッチャー卿や叔母たちからの自分に対する仕打ちに苛立ち、関係のないラファエルに対して腹立ち紛れに怒鳴ったことがあった。
その時、大切な両親の形見を叔母に売られてしまったと、卑屈になっていたことを思い出した。
彼はそんなに前のことを覚えていたというの?
しかもこの世の中で自分が一番可哀相だと悲劇の主人公を演じていた言葉なんかを――。
いや、それだけではない。
クイーンのことだって、湖で話した。
どちらもメレディスにとってはとても重大な出来事だったが、彼にとってただの戯れ事にすぎない。
たかが他人に、しかも八つ当たりで話したことを怒りもせずに耳に入れてくれる彼の寛容さにメレディスは驚いた。
しかも、彼はブローチだけでなく、手が折れるだろうクイーンさえも探し出してくれていたのだ。
ブローチはともかく、クイーンが売られたのは半年も前の話だ。月日があまりにも経ちすぎている。売れ残るなんて考えられないし、労力はもちろん、人員だってばかにならない。こういうことは何も知らないメレディスだが、資金は高額になったはずだ。