今宵は天使と輪舞曲を。

 しかし一番の気がかりは、どうやってクイーンたちを見つけることができたかという疑問以上に、ブローチを見せる際に彼が言った内容だった。

「これ()? 受け取るってなに?」
 どういう意味なのかがさっぱり分からず、メレディスは尋ねた。
 すると彼はごく自然に――特に何を気にするふうでもなく、「君にプレゼントしたくてね」と話した。

 ――プレゼント?

「ダメよ。いけないわ。だってとても高額よ。悔しいけれどわたしには支払うお金はないの」
「いっただろう? プレゼントだって」
 メレディスは大きく首を振った。

「いいえ、そういうわけにはいけないわ。だって貴方にとってわたしはただの客であってそれ以外の何者でもないの。それにもし、ここで受け取ったとしてもまた叔母に取り上げられてしまうわ!」
 やっと巡り会えたのも束の間、自分はまた引き離されてしまう。
 所詮は両親を亡くした居候の身。デボネ家の権力を握っている叔母に立ち向かうことなんてできやしないのだ。
 悲しいけれど、彼の手の届くところに存在してくれるだけで十分だ。

 彼ならきっと他の馬同様にクイーンも大切にしてくれる。
「メレディス」
 ラファエルは尚も話を続けようとするが、メレディスはまたもや首を振り、拒否した。
「……でも、とても嬉しいの」

 メレディスは頬に涙を流したまま、ブローチを胸の前で抱きしめた。
 そんなメレディスを慰めるように、クイーンは鼻先を近づけて慰めてくれる。


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