今宵は天使と輪舞曲を。
「――ええ、そうね。今なら有り得ないと思うけれど、わたしは男性を知らないわ。だからきっと世間でいう男性と同じで貴方も火遊びをしたがっているのだと思ったの」
「君を苦しめるつもりはなかった。あやふやな態度で君を困らせたことは謝るよ。ただぼくは愛する女性は生涯ひとりだけでいいと思っているし、それは君しかいないとも思っているよ」
メレディスを横たえ、腰を引き寄せるラファエルはそっと口にした。
「ああ、ラファエル。わたしもあなたを愛しているわ。でもわたしは没落貴族よ。それに他人の財産さえもなんとも思わないデボネ家にいるの。きっとご両親に反対されてしまうわ。それに、わたしは狙われているわ。貴方に迷惑がかかってしまう!」
そこでメレディスは一昨日前に降りかかった事件を思い出した。
どうして今の今まで忘れることができたのだろう。
男性二人に襲われそうになって、しかも猪にまで遭遇して命まで失いかけたというのに!!
また襲われる可能性だってあるし、もしかすると今度はラファエルが巻き添えになるかもしれないのだ。
自分だけならまだしも、彼が危険な目に遭うくらいなら死んだ方がましだ。
メレディスは目の前が暗闇で覆われた気持ちになった。
「メレディス! 君はぼくにとって大切な女性だ。何があろうと相手が誰であろうと必ず君を守り抜く」
すっかり悲しみに囚われているメレディスを、彼は強く抱きしめた。
たったそれだけで、メレディスの心はまるで蝋燭の炎が灯ったかのようにあたたかくなる。